こんにちは 横浜市青葉区の長津田 & 青葉台の長津田アオバ矯正歯科です。
歯列矯正といえば、皆さまはまず治療に使用される矯正装置を連想されるのではないでしょうか。
このように矯正装置のほうに関心を寄せがちなのですが、今回は治療装置ではなくあながちメジャーな存在ではないリテーナーを取り上げてみたいと思います。
矯正治療では歯を動かす動的処置の期間と歯並びを安定させる保定期間に分けられます。長い治療の末の開放感から保定が軽視されがちなのですが、動的処置による治療結果を左右してしまうとても大切な期間なのです。
保定期間では長い時間をかけて仕上げた歯並びやかみ合わせを安定させるリテーナーという保定装置が使われます。リテーナーにはさまざまなタイプがあるのですが、ひょっとしたらどのリテーナーを使うかで歯並び具合の予後を左右することがあるかもしれません。
リテーナーは下記のようなタイプに大別できます。
・プレート(床)タイプ (一般に広く使用されている)
・マウスピースタイプ(別名 クリアリテーナー)
・審美リテーナー (歯の表面に金属ワイヤーを使用しないプレートタイプ)
・固定式リテーナー (歯の裏側に固定して外れないタイプ)
プレート(床)タイプのリテーナー
マウスピースタイプのクリアリテーナー
固定式リテーナー (当院では主に下顎の前歯部に使用)
これらのリテーナーのデメリットは以下の通り:
① プレートタイプのリテーナーは壊れにくいけれど太いワイヤーが歯の表側に見える・・
② プレートタイプのリテーナーは咬み合わせや技工の精度具合では歯並びの保持が完全ではない・・
③ プレートタイプの金属接合部のろう着部分が銀の酸化膜で黒ずんでくる・・
④ マウスピースタイプのリテーナーの見た目はいいけど汚れて色がくすみやすい・・
⑤ マウスピースタイプのリテーナーは装着感はいいけど、穴が開いたり破折しやすい・・
⑥ マウスピースタイプのリテーナーは歯の全体を覆ってしまうので上下顎のかみ合わせが変わってしまうことも・・
⑦ 審美リテーナーはプレートタイプと同様、咬み合わせや技工の精度具合によって歯並びの保持が左右される・・
⑧ 固定式リテーナーは着けっぱなしで楽だけどデンタルフロスを通せない・・
というように
各々リテーナーにはメリット・デメリットがあり完璧な条件を満たす理想のリテーナーはなかなか見つけられません。
当院ではかつてはプレートタイプのリテーナーを選んでいたのですが、長期間にわたる保定具合(特に下顎の前歯)に難があることから上顎には主にマウスピースタイプのクリアリテーナー、下顎には主に固定式リテーナーを採用しております。
しかしクリアリテーナーは咬み合わせ具合などで比較的短期間に破折してしまうことも多々あり、再作を余儀なくされてしまいます。また審美リテーナーは、機能面では通常のプレート(床)タイプとほぼ同じです。
太めのワイヤーで前歯などを囲むためどうしても目立ちやすい
金属の接合部が銀ろうの酸化膜で黒くなってしまう
歯の形状や咬み合わせ・歯ぎしりなどで装置に穴が開いてしまったり、脱着などの扱い方次第では破折しやすい
そこで、
理想のリテーナーがないのであれば新たに作ってしまおうと試行錯誤を重ねて、先日ようやく納得のいく形に仕上がりました。
今回作り上げたリテーナーは見た目にも非常に優れており、プレートタイプとクリアリテーナーのいいとこどりをしたともいえます。
① 見た目に優れている
② 歯列保定の精度が良い
③ 壊れにくい構造
④ ろう着部分がないので銀ろうで黒ずんだりしない
⑤ 目に見える箇所の変色はほとんどなし
⑥ 装着感が良好
⑦ 大きさがコンパクトで装着時の違和感が少ない
など、これまで使用してきた各リテーナーのメリットはそのままでデメリットを極力排除した会心の出来でもあります。
画像のタイプは一例で、他にもバリエーションがあります。弾性を持つ透明の樹脂ワイヤーは見た目と機能だけではなく生体適合性にも非常に優れた医用高分子材料を使用しております。
他のリテーナーにはない一番の特徴は 表側・裏側ともに弾性機能を持つ樹脂ワイヤーで覆うことで歯の後戻りに対する動きを抑えていること です。
欠点としましては
① 歯の形状によって装置装着の保持力が得られにくい場合がある
② 装置の調整がややむずかしい
が挙げられましてこれからの課題となっておりますが、いまのところ殆どの症例に使用可能となっております。
また、この見た目と機能に優れたリテーナーを裏側矯正治療をされた方々にもお見せしたところ、”これなら目立たないし快適そうなのでぜひ作って欲しい” という感想をいただきました。
というわけで今回新たに独自開発した次世代のリテーナーの紹介をさせていただきました。
ひょっとしたら動的治療期間よりも長くなるかもしれない保定期間を、この次世代型リテーナーで快適にお過ごしになるのはいかがでしょうか。
透明のワイヤーは歯の色と同化してイイ感じですよ
※ 現在このタイプのリテーナーの取扱いは終了させていただいております。
こんにちは 横浜市青葉区 長津田 ⇔ 青葉台の長津田アオバ矯正歯科です。
今朝、インターネットに『滑舌改善手術』という方法が紹介されておりました。記事の内容では滑舌改善手術を受ければ滑舌は治せるという旨の内容でした。これは・・と思い記事を読み進めてみますと案の定、舌小帯切除術のことでした。
舌小帯とは舌の裏側にあるスジのことで、昨今は確かにこの舌小帯が短めの方が多いように思われます。
記事でも書かれていましたようにかつては産科の先生が生後すぐの赤ちゃんのうちにハサミでちょこっと舌小帯を切っていたそうなのですが、近頃ではそのようなことはしていないそうで残念です。
さて、ここからが本題なのですが結論から言いますと一般の方々が舌小帯を切除したら自然に滑舌が改善する保障はありません。
といいますのも、記事の中で紹介されている方々は芸能人であり発声練習などのトレーニングを日常的に実践されている場合がほとんどだと思います。
それゆえ、舌小帯を切除して舌の動きが良くなることで何かしらの口腔内のトレーニングを兼ねることで滑舌が改善されるのだと推察されます。
一方で舌小帯が短くない方でも滑舌の悪い方はいらっしゃいますし、舌小帯が短くても発音にほとんど影響のない方もたくさんいらっしゃいます。
要は舌小帯が短かろうが問題なかろうがちゃんと舌としての機能が適応しているかどうかだと思うのです。
一般の方々が痛い思いをしてまで舌小帯切除術を受けても、その後に舌を動かすトレーニングなどをなんにもしないで放置してしまいますと、手術跡が瘢痕組織となり再度ひきつってきて元の状態に戻りかねません。
そこで舌小帯切除術を受けたのでしたら、術後に『あいうべ体操』などの舌の運動をしっかりと行えば、滑舌の改善につながるかもしれませんね。
ただ、発音・構音障害などは歯並びのみならず単純ではない医学的要因が影響していることもありますので、まずは舌小帯切除ではなく専門の先生に相談されてはいかがでしょうか。
こんにちは 横浜市青葉区 長津田↔青葉台の長津田アオバ矯正歯科です。
今回は下顎歯列にカリエールモーションを応用した症例をご案内いたします。
下顎の側方歯を後方に移動させるという目的ですのでもっぱら反対咬合(うけ口)に使用します。
最初の症例は成人男性ですでに前歯の被蓋(前歯の咬み合わせ)はなんとか改善はしておりますが、さらに下顎の側方歯を後方に傾斜させる目的でカリエールモーションを装着することにしました。
下顎用カリエールモーションを装着前の状態です。
上顎前歯が下顎前歯にぶつかり突きあがってしまっている状態です。
このままでは上顎前歯にみられるスペースがなかなか閉じきれないと考えられます。
下顎側方歯にカリエールモーションを装着した直後の状態です。
カリエールモーション装着から3か月後です。
上顎前歯にみられるスペースは依然認められますが、上顎前歯の突き上げ感が改善されてきています。
下顎左側のカリエールモーションの後ろが脱離していますが、すぐに再装着しました。
カリエールモーション装着して5か月後の状態です。
上顎は幅径を広げるためにバイパスの拡大装置が装着されています。
下顎にはスペースがみられるようになりました。
現在下顎にマルチブラケット装置を再装着してゴムメタルという素材のワイヤーで治療継続中です。
2症例目は10代後半の女性です。
上顎の治療を先行しています。現在上顎左側の小臼歯のねじれを改善している最中です。
上顎の小臼歯のねじれが改善されてワイヤーもしっかりとしたものに交換した時点で、下顎にカリエールモーションを装着しました。
カリエールモーション装着から3か月後の状態です。
下顎前歯にスペースが認められるようになりました。また下顎前歯も内側に入ってきています。
カリエールモーションの使用期間は4か月でした。
カリエールモーションを外してマルチブラケット装置を装着した直後の状態です。
下顎にマルチブラケット装置を装着後4か月後の状態です。
現在ゴムメタルという素材のワイヤーで治療継続中です。
治療期間中で、治療効果をいかに効率よく向上させるためにはどのような適材適所の装置を使うかの判断は非常に難しいのですがとても大切です。
後日、ゴムメタルという材料を扱った治療例もご案内していく予定です。
こんにちは 横浜市青葉区 長津田↔青葉台の長津田アオバ矯正歯科です。
今回はカリエールモーション3Dという装置の紹介です。
どのような装置かといいますと側方歯群を同時に後方に移動させるとても画期的な装置です。
それでは、どんな場合にカリエールモーションを使用するのか症例でご案内いたします。
上顎にはまだ乳臼歯が残存していますが犬歯が窮屈そうなのに加えて前歯が若干前突気味です。
上顎歯列の両側側方歯にカリエールモーション3Dという装置を装着した直後です。
上下顎間には顎間ゴムというエラスティックゴムを終日使用していただきます。
カリエールモーションを使用してから3か月後の状態です。
側方歯が後方に移動したのに加えまして前歯もほぐれ始めています。
この症例はカリエールモーションを4か月間使用しました。
外してから上顎には個々の歯にブラケットを装着してワイヤーによる矯正治療に移行しています。
ワイヤーによる歯の排列を始めてから6か月後の状態です。
前歯の前突状態も改善され、あとは最後臼歯である第二大臼歯の萌出を待ちながら経過観察です。
2症例目は上顎左側犬歯の萌出スペースが足りなく八重歯になっている状態です。
また上下顎の前歯のずれも大きめで、この症例の場合は上顎前歯が左側にずれた状態です。
カリエールモーションを装着して2か月目です。
犬歯が少しずつ下りてきています。
カリエールモーションを外した直後です。使用期間は5か月でした。
多少の歯並びが重なった状態で次回にブラケットを装着してワイヤーによる治療を開始します。
ワイヤーによる治療を開始して6か月後の状態です。
3症例目は成人での使用です。
前歯の重なり具合がやや大きめですが奥行が十分ありますので親しらずを先に抜歯してから治療を進めることにしました。
カリエールモーションを装着した直後です。
カリエールモーション使用開始から5か月後です。
やや動きがゆっくりで10代前半の場合よりも時間を要しています。
カリエールモーションを外した直後の状態です。
使用期間は7か月を要しましたが、この後にワイヤーによる治療に移行しました。
ブラケット装置を装着してから6か月後の状態です。
これからは前歯の咬み合わせを仕上げていきます。
4症例目は片側でカリエールモーションを使用した症例になります。
上顎前歯が左側に傾斜しており下顎前歯の真ん中とずれています。
写真は治療をすでに開始してから3か月経過している状態です。
カリエールモーションを装着してから3か月経過した状態です。
上顎前歯の傾斜が改善されてきています。
上顎にマルチブラケット装置を装着した直後の状態です。これからは少しずつ残りのスペースを閉じながら上下顎前歯の真ん中を合わせていきます。
このようにカリエールモーションを使用する大きなメリットは側方歯を数本同時の移動が可能だということです。
1本ずつ歯を後ろに移動させる場合に比べて、大幅な治療期間の短縮につながることは患者様にとっても大きなメリットになります。
今回は上顎にカリエールモーションを使用した症例をご案内いたしましたので、後日になりますが下顎にカリエールモーションを応用した症例をご案内する予定です
マウスピース型のトレーナーということで、上あご、下あごの個別の歯列に被せるマウスピースを想定されるかもしれませんが、シンプルなマウスピースとは異なりあくまでもトレーナーという矯正治療用の装置です。
それでは、下記にトレーナーのご紹介をさせていただきます。
多種多様なマウスピース型のトレーナーがありますが、画像は EF line という装置になります。
症例や歯列の大きさなどに併せて形は様々なものが選べます。
画像は上顎前突用のトレーナーになります。
どの装置にも共通しているのが舌ガイドによる舌挙上が自然にできるように設計されていることです。
また当装置は素材がポリ塩化ビニルですので軟らかめで数あるトレーナーの中では断トツに装着感は良好です。
しかし、装着時間不足などで装置になかなか慣れないうちは装置を歯で噛み切って傷だらけになってしまうこともあります。
それではトレーナーを装着した状態を見てみましょう。
上顎前突用のトレーナーを装着すると、下あごは前方に誘導された状態になります。
下顎前突用のトレーナーでは下あごが少しだけ後方に誘導された状態です。
このまま上下の唇を軽く閉じて鼻で呼吸をしてもらいます。
習慣的に口呼吸をしていると最初は辛くてなかなか使用できない場合もありますが、これもトレーニングの一環です。口呼吸はあくまでも習癖です。
しかし、鼻疾患などで通年鼻の通りが良くない場合には当院では最初に口呼吸を改善して鼻呼吸がしやすい状態になってからこれらのトレーナーを使用するようにしています。
詳細はHPトップページの『鼻呼吸のすすめ』をご覧になってください。
トレーナーを装着することで舌が自然と挙上することに加え、頬や唇の筋肉のバランスも整ってきます。
例えばトレーナーの各部位の役割は
① バンパーは下唇の過緊張をストレッチするとともに舌位を改善する働きがあります。
② 舌ガイドは嚥下時(飲み込む時)舌を口蓋に誘導させて、正しい舌位を確保できるようにします。これにより舌が口蓋の横方向への発育を促します。
③ ツインスプリントは口腔周囲筋(頬など)の干渉を柔らかげ、適切な歯列の排列を促します。前歯部に付与されているティースシェイプガイド(歯型)が前歯の位置を整えます。
④ 咬合面が厚く臼歯部は翼形状になっているため、顎関節部分にかかる力を軽減させることで下顎の成長を促します。
このようにトレーナーを適時に使用することで、いづれ本格的矯正治療が必要になったとしても比較的短期間で済んでしまうことも多々あります。
いかに混合歯列期の時期を利用した機能改善の治療が大切かということが少しでもご理解の助けになれば幸いです。